本著は、カズオ・イシグロ氏がクローン(clone)人間について書いた本です。翻訳を基に2018年初めに綾瀬はるかさんを主人公としてTBS系でTVドラマ化されました。クローン人間を大量生産し、臓器問題を解決したように見えます。病気の人へ臓器を提供するクロー人間を提供者、この提供者を介護するクローン人間を介護人とよび、クローン人間がクローン人間を世話し臓器提供する世界つまり再生医療が実現しました。でも、もしクローン人間にこころがあったらどうなるでしょうか。一般の人間と同じように生活したいと望まないのでしょうか。

クローン動物としては、ヒツジ、ラット、ウマ、イヌ、ブタ、ネコ、オオカミなどで成功しているようです。日本のクローン技術規制法のように、世界各国でクローン人間の作成をを禁止する枠組みができつつある。たとえば、ネアンデルタール人などの古人類を再生した場合、人間として扱うか動物として扱うなどの問題も起こるであろう。さらに進めば上記のような、イシグロ氏が提示するような問題を起こる。もちろんクローン人間に対する差別問題も起こるであろう、一般人はクローン人間がこころを持って欲しくないと思うであろう。なぜなら、彼らの運命は生まれたときに決まっているのだから。


あなた方の人生はもう決まっています。これから大人になっていきますが、あなた方に老年はありません。いえ、中年もあるかどうか・・・・・・。いずれ臓器提供が始まります。あなた方ははそのために作られた存在で、提供が使命です。
主人公である優秀な介護人でクローン人間のキャッシー・Hは、自分の生活を次のように語っています。


孤独も、慣れるとさほど悪いものではありません。自分の小さな車に乗り込みながら、これからの数時間、大きな灰色の空と道路だけを相手に存分に白昼夢に浸れるかと思うと、これも捨てがたい楽しみです。

日本生命時代に、私も上記のような気分であったことを覚えています。地方支社で、知っている人もいない遠隔地の拠点まで自分一人で車を運転することが日常でした。片道2から3時間を青い空と海を眺めつつ、灰色の道路をひたすら車を走らせるのです。孤独な運転が日常だった。疲れて眠くなると、路肩に止めて仮眠したり、お腹が空くとローソンでおにぎり1個買って食べたりしていました。


わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)
カズオ・イシグロ
早川書房
2008-08-22





Never Let Me Go
Kazuo Ishiguro
Faber & Faber
2011-12