これは吉田松陰の遺書である。ただし普通の遺書ではない、松下村塾に学んだ松陰の門下生に宛てた訣別の言葉である。これを書き上げたのは処刑前日の夕刻であった。この書の冒頭は次のように始まる。

「身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも留置まし大和魂  十月念五日    二十一回猛士」

そして松陰の覚悟は孟子の「至誠にして動かざる者は未だ之れ有らざるなり」の一句にあるといえよう。ただ誠が通じるか通じないか、それを天にゆだねるだけなのである。国の明日を考えた行動が政治家の使命なのではないかと思う。

吉田松陰・留魂録
吉田松陰・留魂録