近年、全国各地で硫化水素ガスによる救急事案が発生している。発生場所近くの人がガスを吸ったことにより、多数の人が救急搬送される事態も起こっている。自然災害の硫化水素中毒による典型的な被害は、温泉地や火山帯での事故である。火山地帯で無風、曇りなどの天候と窪地の条件により硫化水素が高濃度になり、立ち入った観光客などが被害に遭っている。本著も硫化水素中毒による温泉地の死亡事故から事件は始まる。タイトルは『ラプラスの魔女』であるが、ラプラスの悪魔という言葉が基にある。
超人間的知性つまり神なのであろう。さしずめラプラスの魔女は女神ということになる。ヒトは地震予知もできないのに、天候を動かす存在が果たして存在しているのだろうか。
ラプラスの悪魔(Laplace's demon)とは、主に近世・近代の物理学分野で、因果律に基づいて未来の決定性を論じる時に仮想された超越的存在の概念である。「ある時点において作用している全ての力学的・物理的な状態を完全に把握・解析する能力を持つがゆえに、未来を含む宇宙の全運動までも確定的に知りえる」という超人間的知性のことをいう。フランスの数学者ピエール=シモン・ラプラス(Pierre-Simon Laplace, 1749年3月23日 - 1827年3月5日)によって提唱された。